<地方議員カウンセリング活動研究会>

代表紹介/富田富士也(とみたふじや)

コミュニケーション・ワーカー、教育・心理カウンセラー、子ども家庭教育フォーラム代表

<富田富士也プロフィール>
1954年、静岡県御前崎市出身。総合労働研究所に勤務し、地方議員や行政職員との交流
を重ねる。
また「地方自治体活性化研究会」事務局の活動から、『地方自治体活性化のための自主研究
実践ハンドブック』や『地方政治家活動事典』(総合労働研究所)の企画・取材・編集・広報に
関わる。
その間、教育相談ボランティアとして10年間活動。
その後相談活動を“生業”にし、民間の青少年相談援助機関を開設する。
中央教育審議会第1小委員会(いじめ・不登校)においてもヒヤリングをうけている。
千葉明徳短期大学幼児教育科客員教授、千葉大学教育学部講師を経て、現在、文京学院
大学生涯学習センター講師も務める。
近著に 著書『地方議員のためのカウンセリング入門』(ぎょうせい)、 『寅さん的コミュニ
ケーションのすすめ』(北水)など。

*「地方議員のためのカウンセリング入門』(ぎょうせい)が、総務省「行政相談員」の推薦図書に
採用されました。

*『地方議員のためのカウンセリング入門』書評はこちら


地方議員カウンセリング活動研究会/趣旨

 地方議員は、住民の日々直面している悩みに無頓着であってはならない。住民の “悩み”を“提案”
にして“制度改正”にまでもっていくのが議員である。だから、住民の 悩みを聴いて汲み取れるカウンセ
リングマインドとスキルは、議員の必須条件である。
  また、住民の高学歴・個性化のなかで、意欲をもてば「誰でも立候補」できる時代 になっている。
そのときに住民から支持や信頼を得られる人は、特定組織にあぐら をかいて票集めに必死になって
いるような人ではなく、いつも等身大で人間関係を 築いていく人である。
 だから、住民にこびることなく信頼してもらえる議員に自分のパーソ ナリティを高めていく ことが大切
である。
 本研究会では、カウンセリングを相談と狭く考えるのではなく、 住民 一人ひとりとつながるコミュニ
ケーション の手立てとして学んでいくことを研究会の目的とする。


住民の「声なき声を聴く」ために/富田富士也(2008年11月号「広報」より抜粋)
  〜地方議員、行政職員こそ「まちのカウンセラー」〜

●はじめに 
 カウンセリングというと、心の病に対する相談や治療などの専門的な行為ととらえる方が多いと思いますが、
そうではありません。
  カウンセリングとは「人間関係をつくること」「人と人とがかかわること」をいいます。
 そのためには、住民の言葉や形にできない「声なき声を聴く」ことが必要です。
 カウンセリングマインドを養うことこそ、行政職員や地方議員に課せられた、住民との関係づくりの原点なの
です。

●住民サービスの新しい時代に入った
 私が知るある自治体には、臨時開設のものも含め、90ほどの相談窓口が設けられています。
  住民からみれば、これだけの窓口の種類が増えて、一見、行政サービスの向上が図られていると思うかも
しれません。
  しかし、一方の行政側にとって相談窓口の多様化は、いよいよ住民サービスの難しい時代に入ったことを
あらわしています。
  行政はサービス機関です。かつては、地域の権威ある存在、特権的立場としていればよかったのですが、
地方に自立を求めた地方分権の時代では、そうはいきません。行政側から住民の懐に入ってこその地方自
治活性化になったのです。

●情報提供ではなく「声なき声を聴く」ことが本来のサービス
  昔は、近所のだれかに困りごとがあったら、地域の共同体の中で相談し合い、解決していました。
  しかし核家族化が進み、地域とのつながりを持たない家が増えた今、相談し合う機能が地域からなくなって
しまいました。
 「近所で子どもが遊べる場所を教えてください」と、隣近所に聞けばすむことを、わざわざ役所に聞きにくる
のは、その証拠です。
  私はこうした状況を「個性尊重・核家族化」と呼んでいます。
  個性は尊重されますが、住民はそれぞれ孤立しているのです。
  そのため、 本来「自助」や「互助」で解決していたニーズや困りごとが、直接役所に持ち込まれるように
なり、それゆえに行政サービスは難しい時代をむかえたのです。
  では、そうした住民ニーズに対して、サービスを提供する側としては、どのように対応していけばよいのか。
  さまざまな相談窓口を見ていて残念に思うのは、窓口が単なる情報提供機関で終わってしまっていること
です。情報提供は、あくまでもきっかけ。本当の意味での相談窓口になるには、住民の「声なき声を聴く」こと
が必要なのです。
 「声なき声」とは、言葉や形にできない住民の気持ちのこと。それを聴くには、話しての言葉や表情の裏側に
隠されている気持ち(真実、本音)を推し量ろうと察する姿勢で聴くことです。このことが、地域に根ざした、本当
の意味でのサービス機関になっていけるのかどうかが試されているのです。

●「聴く」ことこそ、地方議員活動の原点
  2007年に著した『地方議員のためのカウンセリング入門』(ぎょうせい)が、総務省「行政相談員」の推薦図書
に採用されました。私がこれまで出会った地方議員の、「声なき声を聴く」実践例を多数紹介しています。
  地方議員の役割といえば、本来の仕事は、住民の意見を聴いたり、調査・研究したりして、政策などの形 にし
て、議会に提言することです。ここで、「住民の声なき声を聴く」ことができるかどうかが、地域や地域住民から
支持されるかどうかの分かれ目ではないかと思います。
  しかし、議員を対象にした研修では、プレゼンテーションや話し方のトレーニングは積極的に取り入れられている
ものの、「聴く」ことの研修はほとんど行われていません。
  同書で私が言いたかったのは、「聴く」ことこそ、議員活動の原点であり、地方議員こそ、「まちのカウンセラー」
であるということです。

●対応が間違っていたら、謝って修正すればいい
  「声なき声を聴く」ことが求められているのは、地方議員だけではありません。行政職員こそ、その役割が求め
られています。
  「声なき声」は、一歩関係が深まらなければ聴くことはできません。
  住民が発した声をただ「聞く」のではなく、「この人(住民)は、どのようなことを私(職員)に語ってほしいと
思って いるのか」を考え、声をかけてみるのです。すると、こちらが質問していないことを話すことがあります。
  それがその人の本音であり、声なき声なのです。
  こうした話を行政職員対象の研修などでお話しすると、「聞かれたことだけを答えればいいはずで、それは
余分な仕事ではないか」、「それをすることによって、相手に不都合が生じたら、誰が責任をとるのか」、「訴え
られた らどうするのか」などと、反論されることがあります。
  しかし、もし間違った対応になったら、謝ればいいし、修正すればいいのです。
  行政職員も、地方議員も、すべては人と人との関係づくりのためにその役割はあるのです。だから、行政職員
や、地方議員による住民との人間関係づくりが、まちを変えていくと思います。
  孤独な住民が増えるほど、カウンセリングが生きてきます。
  住民の言葉や形にできない声を聴くことができるかどうか。
  今こそ、行政職員も、地方議員も、人間関係のクリエイターにならなければなりません。


■地方議員・自治体職員の声
(『地方議員のためのカウンセリング入門』(ぎょうせい)より抜粋)

・市議会議員(長崎県・女性)の声
「議員の自己主張は“一人前”ですよ。住民の声を聞かなければと頭では分かっているのですが、どうしても
『私は○○した』と訴えてしまうんです。だいたい、自分の顔を街中に貼ることを承知で選挙に出るわけですから
どちらかというと、話したいほうでしょう」

・市議会議員(鹿児島県・男性)
  「頭はそのつもりで、よく聴いて、よく調べなければ、と思うのですが、ついすぐに『何かしなければ』と動いて
しまうんですよね」

・市議会議員(千葉県・男性)の声
  「どうしても気持ちを聴く前に“やった”ことを先に言ってしまうんですよね。余裕がないのでしょうね」
 「予算がきちんと執行されているかをみるのが、私たちの一番大切な仕事なんですね。
  最後は市長の決裁ですから、議員が“これをやった”ということは、本当はないんです。
  でも、どうしても次の選挙を考えてしまうとね・・・」

・町議会議員(男性)の気持ち
『あの人(私)の言うことは確かに正しいし、町のことを考えていることもよくわかる。しかし、どうもあの言い方が
気に食わない、人を問い詰めるばかりで。もう少し相手の気持ちもわかってあげなければ。あたたかいところが
ないんだよ』と自分の人物評を耳にした。自分としては「事実を確認しているだけなのに」と戸惑った。
  ところが、ある支持者から「(あなたは)議員としては堅物ですが、人としては融通性のある人なんですね」と
言われ、その瞬間、「そこでバランスをとっている自分に気がついた」という。
  それまでの押し付ける表現方法に「そうかもしれませんが…」というひと言が添えられるようになったのは、
まもなくだった。

・総務課長・男性の悩み
  昨年異動してきたA君(41歳)は、地味な仕事に嫌な顔一つ見せず、コツコツと取り組んでくれているが、
どうも人付き合いが悪く、職場から浮いている気がするが…。

・福祉課長・男性の悩み
4年目のA君(28歳)は、無表情、必要以上の話をせず、何を考えているかわからない…。

・企画経済課長・男性の悩み
中堅職員になりつつある、幹部候補のAさん(30歳)が、異動一年目に、ことあるごとに「前の職場では…」
と“演説”をぶつのですが…。

 

   <身近にできるカウンセリング・ワーク>

◆「そんな“心のくせ”が大好きです」/おせっかいにならない援助的関わりの基本

 人の“枠組み”とは、その人の価値観であり、行動基準、パーソナリティでもあります。
 その枠組みは、その人が今日まで「生きのびてくるために」やっとの思いで作り上げてきたものです。
 だから、他人からみたら野暮ったい振る舞いをしているように見えても、それはその人なりに「生きのびていく」
ための“尊い選択”の一つです。
  さらに、その枠組みは世界中に二つとして同じものはありません。
  人間関係とは、この枠組みと枠組みのぶつかり合いです。
  だから本来的に人間関係において二つの“枠”がピタッと重なることはありません。
  よく「相性が合っている」というが、それも一部分です。
  だから、理想を忘れずに現実の中で、「せめぎあって、折り合って、お互いさま」をしつこく繰り返していくしかない
のです。
  そんな対立、理解、肯定の中で、人はお互いの“枠組み”にふれたり、ふれられたりします。
  そのときお互いに「ふれてほしくない」ところにふれられると、抵抗・不快感を持ちます。
  これが「防衛」であり、「心のくせ」です。
  「防衛」とは、「これ以上近づかないで」というメッセージであり、相手の「くせ」が見えたら「いまはかなわぬ、
時節を待て」と思い、ふれないでそっとしておいたほうがいいのです。
  そして、自分が自分の「くせ」を感じたら、少しだけ関係から遠慮して、一休みすることが賢明です。
  自分の「防衛したい気持ち」と向き合って“枠組み”の再構築に取り組めばよいのです。

相手の“枠組み”に近づく

 互いの「心のくせ」を知るには、「私の苦手な人」を紹介しあうとよいでしょう。
  まず自分の枠をみつめて、自己開示の口火をきるのは援助者のあなたです。
  「○○さん、あなたが苦手だなぁと思う人は、どんな人ですか。
  私は、言動が一致していない人ですね。
  だから、約束をしておきながら守らない人には、ついつい強い口調(心のくせ)でいつも話しかけてしまうんですよね。
  私って、けっこう口約束で失敗してきたので、その反動なのか、約束については、人一倍慎重になるんですよ。」
  口火を切っても、あなたの問いかけに相手が話し始めたら、まず聞き役になって、その枠組みをイメージしていく
ことが大切です。
  そして「私の苦手な人」を向き合う相手の中に重ねないことです。それをすると、嫌味なセッションになってしまいます。
  「苦手な人っていわれて、具体的には思い浮かびませんでしたが、私は少しグズグズしている性格なのか、
決め付けていくような言い方をする人には、無口になってしまうんです。
  そして反対意見も言わないので、納得したと思われてしまうんです。
  でも心の中では、納得していないので、素直になれないのです。
  表面はいい人に見えて、けっこうがんこ者です。
  最近では、無口になる方が楽になって・・・このクセを直したいのですが。」
  このような人は、気が弱いようにみえて根性があり、落ち着いてみえても心は臆病な人だったりします。
  そして「はかなげ」に生きる術を身につけています。
  「無口になるのは、いろいろな人の心を考えてしまうからでしょう。
  見過ごされやすい人には、あなたは救いになっていると思いますよ。
  だから、私は無口になってしまうあなたが大好きです。
  このように援助者であるあなたが相手の「心のくせ」を肯定すると、相手はあなたに防衛する必要がなくなります。
  そして「苦手な人」から「相性のいい人」の話題に変えていくと「脇の甘さ」という心のくせがみえてきたりするのです。

 

人と心が通じ合うコミュニケーションの学びとして、「講演&コミュニケーションワーク」を企画しませんか。

いろいろなご事情があるかと思いますが、まずは集う場を「開きたい」という「呼びかけたい」思いを大切に

できたらと思っております。

とりあえず、直接ご一報ください。

みなさまお一人おひとりとの出会いをいただけることが、私たちの喜びでもあります。

−富田富士也(TEL:047-394-6000)


■実績例(地方議員研修関係)  研修テーマ/「現代教育におけるカウンセリング的議員の役割」など

・地方自治政策研究会

・宮城県町村議会議長会

・奈良県町村議会議長会

・京都府市町村振興協会

・千葉県印旛管内北総東部管内市議会

・東京都瑞穂町議会

・総務省行政相談員中央研修

・総務省関東管区行政評価局・行政相談員研究会

・愛知県尾張町村会

・愛知県豊田市議会

・千葉県山武郡市議会議長会 

・千葉県山武郡大網白里町役場
「声なき声を聴く」〜住民の心理や背景を“聴く”」 ほか

・ひたちなか市 市民活動クリエーター養成講座
「地域再生は心の通ったコミュニケーションから」
〜「お互いさま」の心で磨く「知る力」「知らせる力」

・島根県町村議会議長会

・関東市議会事務局職員研修会

・関東市議会議長会

■「『説く』『話す』議員よりも『聴く』議員へ」研修会参加議員の感想

一市民としての「シロウト感覚」と行政の仕組みを知る者としての「プロ感覚」を持つ

 感想が遅くなり申し訳ありません。言い訳にはなりませんが、3〜4月は地方議員にとって多忙な季節でありまして、失礼をおゆるしいただければ幸いです。
  議員活動、特に市民とのコミュニケーションにおいて、カウンセリング的思考での実践、目を見開かされる思いがいたしました。日常の議員活動の中で、様々な思いや苦悩にふれる機会は少なくないわけですが、行政に関わることであれば、私たち議員は、一般市民がなかなか知ることのできない情報を持っている立場なので、つい無意識のうちに「指導者的立場」から接してしまいがちだと思います。議員は、同時に行政のプロであってはならないと思います。選挙で選出されることで、仕事の機会を与えられているわけですから、頭の中の半分は一市民としてのシロウト感覚、もう半分は行政の仕組みを知る者としてのプロ感覚、と、二つの感覚と視点を持ってバランスを計りながら市民に接し、事に臨む姿勢が必要なのでは、と思うところです。
  国会議員も地方議員も、選挙という、ある意味では合法的な戦い、しかも地域社会をまきこんでの戦を経ての立場にあるので、基本的にケンカもできなければ務まらないところがあるのですが、だからこそ立場や地域の異なる人と人の間をつなぐコミュニケーター役としての自分を意識して行動しなければならないかもしれません。また学ばせていただく機会をいただければ幸いです。
(広島県内・市議会議員)